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新しい発音記号フォントを開発中です

2023/08/16

当社の生命線でもある、発音記号フォントをイチから作り直してます。

現行のOpenTypeフォントは、独自配列だった旧Type1フォント(発音記号SHBフォント)を元に、Unicode準拠の配列やグリフの大幅追加、メトリクスの調整などなどを施してあります(一般販売、一般公開はしておりません)。

旧Type1フォントはあくまでキーボードから簡単に直接入力できることを目指して開発されたもので当初はあれで十分だったんですが、規格上グリフがあれ以上増やせなかったこと、そもそもType1という規格そのものに将来性がまったくなかったので、OpenType化は必須でした。加えて、当時依頼されていた某社の英語辞典絡みの案件であまり見かけないグリフがたくさんでてきてしまって、開発せざるを得ないという状況でもありました。

とはいえフォント素人がごちゃごちゃやったので、見る人が見たらどこか“キメラ感”のあるフォントに見えるんじゃないでしょうか。

旧Type1フォントは、私が入社した20数年前にはすでに製品化されていて、何を参考にデザインされたものか実は知りません。モリサワの電算機に搭載されていた記号類を元にしたとか聞いたような気がしますけれど。

そんな経緯の現行フォントでこれまで数十年やってきたわけですが、ちょいちょい修正指示が入るようになりました。主に字間調整。

発音記号は、英単語にはあり得ない文字の組み合わせがあって、すべての組み合わせを見切るのは非常に困難なんです。今頃そのあたりことがあぶり出される形になっています。

それと、元がTimesっぽい書体なんですが、やはりこれは細いステムが細すぎる。誌面ではたいてい小さいサイズで扱われる発音記号において、細すぎる部分があると可読性にも問題が出てきます。

また、当時カーニング調整をキリキリとやっていたとき「ツメる」調整にやっきになっていたので、何か文字間がギュッとしていて、今見るとすき間がなくて、余裕がない感じなんです。

そういうことをトータルで考えると、今あるフォントに調整を加えるより、根本から作り直した方がいいものになるのではないかと判断しました。

そうはいっても、ホントにイチからデザインするのはあまりに知識も経験もありません。

というわけで、源ノ明朝をベースにそこから改変を加えて制作することにしました(源ノ明朝は「SIL Open Font License」に基づいて配布されています)。

新たに開発するに当たって、現行のOpenTypeフォントよりもさらに記号を増やして、英語以外(主に日本語)の音声記号にも対応させようと思っています。

これまでの発音記号は基本的には英語辞典で使われているグリフをを中心にピックアップしてきましたが、研究者や大学生が読む音声学の学術書で使われるようなグリフの搭載を考えています。

また、記号類もさることながら、OpenTypeの規格を大いに活用し、発音記号フォントでありながらそのまま日本語の入力にも対応できるようにもするつもりです。あくまで発音記号が優先なので日本語の文字組みには目をつむっていただくことになりますが……

なるべくツメ過ぎないように、可読性の高い、読みやすい発音記号フォントを目指します。きっちりデザインされているものからの改変なので、わりと気楽に制作しています。